ベストアルバムとは?
10年前に開設だけしたブログを発見した。
数年前から、ベストアルバムについていろんなことを書きたいと思っていたのだが、
このブログのIDがMoonDiskだったので、音楽について書くにはピッタリじゃないか。
MoonDiskは1997年発売の『MOON』というゲームからいただいたものだ。
発売当時から大好きなゲームで、長らく知る人ぞ知るゲームだったのが、
昨年Switchに移植され話題になった。22年の時を経ての奇跡だった。
こんな時代が来るとは思っていなかった。
私も十数年ぶりにMOONをプレイすることができた。
時代は変わっていく。
ベスト盤ブログ構想は何年も頭の中にだけあったのだが、
CDはどんどん売れなくなり、サブスクやYouTubeが主流となり、
“アルバム”というパッケージではなく、”プレイリスト”という聴き方がメインとなった。
好きな曲を好きなだけ聴くことができる。
この”好きなだけ”とは、サブスクのキャッチコピーにあるような何千万曲聴き放題という意味と、”好きな量だけ””好きな曲数だけ”というニュアンスも含んでいる。
つまり、あるアーティストの新曲や往年の大ヒット曲を聴きたいと思った時、オリジナルアルバムやベスト盤をまるごと1枚買ったりレンタルしたりダウンロードしたりするのではなく、その聴きたい1曲だけサブスクやYouTubeで聴けばいいのである。
さらに、既存のベスト盤を買わなくても、自分だけの、自分好みの選曲のプレイリストを作成すれば、そのアーティストのマイベストの完成だ。
サブスク時代に、ベストアルバムについて語るブログを始めるのは、遅すぎるかもしれない。いや、実際遅かったと自分でも痛感している。
ではどうして今、ベスト盤ブログなのか。
だって、好きなんだもん、ベストアルバムが。
昔からベストアルバムが好きだった。
どうしてこんなにもベストアルバムに私は心惹かれるのだろう。だれか教えてほしい。気づいたらベストアルバムについて一家言持つ人間になっていた。なんの業(ごう)だろうか。
アーティストにとっては、ベストアルバムは一つの到達点、集大成的なものであるはずだ。しかしそれは諸刃の剣でもある。ベストアルバムを出すことは必ずしも良いことばかりではないのである。どういう意味かは今後いろんなところで触れていきたい。
さてここで、私が考える、ベスト盤の定義をご紹介させていただきたい。
1:シングル曲中心である。
2:代表曲やアルバムのリード曲、タイアップ曲などが網羅されている。
3:アーティストのキャリアに応じたボリュームである。
4:何周年記念など、節目に合わせて企画、発売される。
これらを満たしているベスト盤は、優れたベスト盤の誉れも高く、逆にそうでないものは「なんで出したのこれ」と非難されてしまうのである。私に。
1つ具体例を挙げてみよう。
栄えある第1回目のベスト盤ブログで取り上げる1枚は、上記の条件をすべて満たしている。
チャットモンチー『チャットモンチー BEST 2005~2011』
チャットモンチーが2012年にリリースした、初のベストアルバムである。
1~4の定義に合わせて一つひとつ確認していこう。
1:シングル曲中心である。
まず、それまでのシングル曲がすべて収録されている点が素晴らしい。正確に言うと、このベスト盤の発売前に2枚立て続けにシングル曲がリリースされていて、それは入っていないのだが、それは4番目の定義のところで説明したい。
2:代表曲やアルバムのリード曲、タイアップ曲などが網羅されている。
このベストアルバムの選曲はとてもシンプルでいてマスト。全シングル曲に加え、4枚のオリジナルアルバム、2枚のミニアルバムから1曲ずつ選曲されているのだが、それがすべてアルバムのリード曲なのである。アルバムのリード曲とは、アルバムリリース時にラジオ局などで先行オンエアされたり、プロモーションでテレビ番組で歌唱する際にチョイスされる、いわばそのアルバムの名刺代わりの曲のことを指している。
なんという清々しい選曲だろうか。文字通り代表曲を詰め込んだことになっている。これが例えばオリジナルアルバムの隠れた名曲や、シングルのカップリングの知る人ぞ知る曲なんかをセレクトした場合、そこに正解というものはない。曲に対する思い入れの深さは人それぞれだし、「なんでこの曲が入って、あの曲が入ってないの!?」という議論も巻き起こってしまう。しかし、シングル曲とアルバムのリード曲のみに統一することで、それを回避している。個人的にはこの曲も入れてほしかったけど、まあ妥当な選曲だよな、とコアなファンも納得せざるを得ない。
また、単にシングル曲を網羅したシングルコレクションだと、チャットモンチーの場合、4thアルバムとミニアルバムにはシングル曲が入っていないので、そのアルバムから1曲も収録されないということが起こってしまう。
私がシングル曲で一番好きなのは『染まるよ』。いつ聴いても完璧な曲だと思う。
『ここだけの話』はシングル曲ではないのだが、ミニアルバムのリード曲でアニメ主題歌としても耳なじみがあった。ベスト盤に収録されてとても嬉しかった。
3:アーティストのキャリアに応じたボリュームである。
4:何周年記念など、節目に合わせて企画、発売される。
3と4を合わせてみていこう。まず3であるが、チャットモンチーがメジャーデビューしてからの7年間が1枚にまとめている。7年くらいが、1枚としてまとめられるギリギリの線ではないかと考えられる。10年になると2枚組も珍しくない。1枚にまとまっているという点でもマルである。
逆に、7年間でベストアルバムというのは中途半端な時期じゃないか?と思われるかもしれない。3ピースガールズロックバンドだった彼女らであるが、メンバーの脱退があったのである。それに合わせて、3ピース時代の一区切りとして発売されたという経緯があるのだ。
なので、ベスト盤の直前にリリースされた2枚のシングルは収録されていない。それらは2人体制になってからの楽曲であるからだ。ベスト盤発売の経緯もタイミングも申し分ない。これほど完成度の高い洗練されたベストアルバムは珍しいだろう。
なお、チャットモンチーは2018年に活動を完結しており、最後の集大成として2枚組のベストアルバムをリリースしている。その収録曲もまた素晴らしい。オフィシャルサイトの説明文を引用させていただくと、
―13年間のキャリアを網羅するオールタイム音源ベスト。全シングル表題曲(オリジナル曲のみ)+アルバムリード曲を網羅した、珠玉の全35曲を全曲リマスタリングで収録。―
こちらもまた、全シングル曲とアルバムリード曲で構成されているのである。見事、と称賛を送りたい。チャットモンチーは2人体制になってからも『majority blues』などの名曲がたくさんあるし、初ベストの収録曲はすべてもれなく入っているので、一家に一枚、手元に置いておきたい一生ものとしてはこちらをチョイスしたい。
思いのほか長くなってしまいましたが、こんな感じで、これからベストアルバムについて語っていきたいと思っております。
どうぞよろしくお願い申し上げます。